ルナシー

ヤン・シュヴァンクマイエル監督

人間の狂気というシュヴァンクマイエルならではのテーマ。
主人公は最近、精神病院(字幕ママ)で入院した後に死亡した母親がトラウマとなって、精神病院に連行される悪夢を見るようになってしまっているが、ある日、侯爵と名乗る男性に屋敷に招待されて・・・という話。
ある意味、分かりやすすぎる気はするし、ほかのシュヴァンクマイエル作品に比べると突出したところはないですが、合格点は間違いない。
テーマに関しては明確というよりもはじめに監督自らがすべてを語っているように精神病理に対するアプローチ(療法というより管理手法って感じだけど)の違い、すなわち患者の好きなようにさせるやり方と患者に物理的拘束を加えるやり方どちらも描いて見せた上で、どちらから逃れることはできない末路を描く。そういう意味で監督自身が冒頭で述べている「精神病理に関するどちらの態度の欠点を足しあっている場所があります。現実社会です」という言葉が利いてくる。
しかし、ここでそれにあてはまらない人物がシャルロット。このインフォマニアの女性は自由(侯爵)の側にも束縛(院長)の側にも居場所を作って影響を及ぼしている。主人公がどちらの世界にも居場所がなかったのと対照的に。
アニメ部分は今回は本筋の中で使用するというよりは、メタファーとしての使用が目立つ。これはあんまりなかったことかも。