ボトルネック

米澤穂信

うーん、ダメ・・・だろ?これ。

かなりネガティブな家庭環境にある主人公リョウが、ふと気が付くともとの世界では流産死した姉サキが生きていて、自分がいないIFの世界に迷い込む。
リョウが「もうひとつの世界」を見聞するうちに、だんだんともとの世界との違いに気が付いて・・・という話。
相変わらず、米澤の思春期独特の偽善や思い込みを見せるやり方は非常に優れている。特に本作は、パラレルワールドという物語の構成からも、それらが明確に浮き出てくる。
しかし、こいつは救いがない。父母の浮気やアクセ屋の閉店など「サキとリョウの能力の差による結末回避」から、ノゾミとのかけがえのない絆とリョウが思っていたことも「自分自身の鏡像」にしか過ぎないと分かってしまい、あまつさえ、ハルカによる未必の故意による殺人?に気づかないままずっと過ごしてきたことが暴かれる。
リョウの居場所が丹念に少しづつ削られていき、なにもなくなったところでもとの世界に戻らされる。
思春期の閉塞感はこれ異常ないくらい伝わってくる、くるが、それしか伝わってこない。悲劇的な結末であっても閉塞するだけが結論じゃないのは「さよなら妖精」など他の作品からも読み取れるテーマだと思う。なぜ、この作品ではそのテーマをあえて捨て去っているのか、ちょっと(私の)気持ちの整理が必要かもしれない。